田んぼに囲まれたそこは、門構えも立派で豪農の屋敷であったと思わせるが、内部はやや”改築し過ぎ”の感があり少し残念だった。
店を出て、駐車した場所とは反対の方向へ歩いてみた。
車一台がやっと通れる細い道が続いていたが、少し歩くと片側は巨大な岩山である事に気が付いた。
その岩山には、所々に巾50センチ程の穴が掘ってあり奥へ続いていた。人間がやっと入れる程度の細い入口だが、穴はいくつもある。
中は真っ暗で細かい様子は何も分からないが、それぞれが繫がっていて往来できるようになっている。
これは、おそらく防空壕だったのだろう。
館山は軍事基地のあった所なので、こういうものは町の中に、まだまだ沢山残されていると思われる。
そして岩肌には多数の「馬頭観音」も安置されていた。
この場所と馬頭観音との繫がりは何も分からないが、巨大な岩山をくり抜いて置かれた観音像と防空壕の暗い穴が、ここを特別な場所にしている。
近くの民家の入口に、梵字が書かれた木製の燭台が立てられていた。
この時期なので、祖先の霊を迎えるために置かれたものと思われるが、私にとっては初めて見た形だった。
これが又、その場の雰囲気と相乗効果を発揮して、何とも言えない空間を創り出している。
近くの場所にも、まだまだ知らない世界が沢山あるものだ。